2008年09月16日

◆ギルマン,シャーロット・パーキンズ◆

淑やかな悪夢

著者名:シンシア・アスキス(著)
倉阪鬼一郎(編訳)
出版社:東京創元社
出版年:2000.10
ISBN :9784488013134





夏の休暇を、“わたし”は田舎の孤立した家で過ごすことになった。
そこで、“わたし”は、毎日厳しく管理された療養生活を送るのだ。
だが、その大きな部屋が“わたし”は好きではなかった。
ところどころ剥がれている、くすんだ、不潔な感じの黄色い壁紙。その奇妙で曖昧な模様も、色も、“わたし”を苛立たせる。

暫く暮らしても、壁紙だけは好きになれない。
壁紙には、表情がある。とても豊かな表情が。それは、模様として繰り返し現れる。


折れた首みたいにだらっと垂れて、球根のような眼が逆さまのまま、こっちを眺めているように見える模様だ。


この壁紙のことが、頭から離れない。
やがて、そこに隠された形が。次第に上体を折り曲げ、模様の向こうを這い回る女のように見えてくる。

“わたし”は、この壁紙をもっと知りたい。
そして、誰にも知られたくはない。

やがて、黄色い染みが服に付く。
匂いもする。髪の中までも潜り込む、黄色い匂い。
壁紙の床に近い辺りに、部屋をぐるりと回る筋がある。何度もこすったような筋が。どうして付いたのかは分からない。

壁紙の模様の向こうには、時には沢山の女たちがいるような気がする。


模様は彼女たちを絞め殺し、仰向けにする。
彼女たちは白眼をむく。



やがて、昼間、女が壁紙から外に出ていることに気付く。
見たのだ。
這い回っている姿を。
彼女を非難したりはしない。


わたしは昼間這う時はいつも鍵をかけることにしている。



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2008年09月07日

◆佐々木丸美◆

影の姉妹

著者名:佐々木丸美(著)
出版社:ブッキング
出版年:2007.12
ISBN :9784835443539





サクサクと、ウェハースの歯ごたえ、甘い口触り。
聞こえる言葉は、歌か祈りか。
祝詞は舞い飛び、心を絡め、溶け込む先で根を下ろす。

一人か二人か、二人か一人か。
同じ姿の女子が惑う、同じ言葉で口ずさむ。
隠れた里の子守唄、継がれる願い、告げられる想い。
去りし時代は雪に隠れ、子孫を守り、言葉を放つ。


哀れとは思うまいぞ。


何が運命か。
何が愛か。
何が縁か。
何が美か。

風が呼び、緑が隠し、雪が見守る次への繋ぎ。
始まりはそこ、創まりはそこ。旅路は続き、唄は広がる。
時を待ち、時を掴み、過去に隠れ、未来を紡ぐ。



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2008年08月30日

◇ヴィークランド,イロン◇

ながいながい旅

著者名:イロン・ヴィークランド(画)
ローセ・ラーゲルクランツ(著)
石井登志子(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2008.05
ISBN :9784001112092





先日、岩波書店から『ながいながい旅』(ローセ・ラーゲルクランツ 文/イロン・ヴィークランド 絵)が出版されました。
リンドグレーン作品の殆どの挿絵を手がけた、ヴィークランドの自伝的な絵本です。

駅のホームで、大きな犬と大きなカバンに挟まれて、立ち尽くす幼い少女…表紙のこの少女がヴィークランドです。
誰もいないホーム。その果ては小さく、遠く…
…なんて孤独で寂しい絵でしょう。
でも、少女は毅然とした態度で立っています。
この少女の、この姿が力強く…そのことに、少しだけ安心するのです…


戦時下のエストニアについて描かれている間は、少女には名前がありません。

美しい、平和なイラストと
不安で、辛いイラストと…



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2008年08月18日

◇カー/ケル,ジュディス◇

おちゃのじかんにきたとら 改訂新版

著者名:ジュディス・カー(著)
晴海耕平(訳)
出版社:童話館出版
出版年:1994.09
ISBN :9784924938212





動物たちが、お客様としてお家に来る絵本は、数多くありますよね。
その中でも、特に有名なものの1つが『おちゃのじかんにきたとら』(ジュディス・カー/童話館)ではないでしょうか。


実は、この絵本、チョコちょこは少し苦手です。


おちゃのじかんに、不意にベルが鳴ってトラがやってきます。

「ごめんください。ぼく とてもおなかが すいているんです。おちゃのじかんに、ごいっしょさせて いただけませんか?」

招き入れてもらえたトラは、台所でソフィーやお母さんと一緒にテーブルにつきます。



・・・このページの絵を見ると、どうしても、トラが「父親」のように思えてしまいます。



ソフィーとお母さんは、トラを前に、イキイキとしています。
トラが夕ご飯を全部食べてしまっても、お父さんのビールを全部飲んでしまっても、ソフィーはトラに頬を寄せ甘えているのです。



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◆オルコット/オールコット,ルイザ・メイ◆

病院のスケッチ

著者名:L.M.オルコット(著)
谷口由美子(訳)
出版社:篠崎書林
出版年:1985.05
ISBN :9784784104437





綺麗な青空でしたね☆

なんて暖かな師走なんでしょう!
ちっとも落ちない枯れ葉を木々から払い、今日は、少し雑草も抜きました。



今から144年も前のこと。

この12月の空の下、一人の女性が傷病兵の看護婦となるために、温かな家を飛び出していました。

それは30歳のルイザ・メイ・オルコットであり、その時の体験を元に書かれたのが本書『病院のスケッチ』(篠崎書林)です。


…この時にはもう、妹のエリザベス(ベス)は亡くなっていました。

本書には、その死と比して描かれている場面があります。


これまでわたしは何度も臨終の床に呼ばれたが、これほど胸の痛む思いをしたのは初めてだった。
このジョンと同じく、ある我慢強い精神の持ち主が天国へ召されるときに、母がわたしを呼びよせたとき以来である。



多くの死と、不快な傷や心の病が蔓延する戦地の病院にありながら、ルイザは時にユーモアを交えながら、明るい文章で看護婦としての体験を綴っています。
男のような性格と、その勢いのある行動は本当に『若草物語』のジョーにそっくりですね。



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2008年08月12日

◇ウィーズナー,デイヴィッド/デヴィッド◇

漂流物

著者名:デイヴィッド・ウィーズナー(著)
出版社:ビーエル出版
出版年:2007.05
ISBN :9784776402381





暑い=海、という非常に単純な思考で手にしたのが、ウィーズナーの『漂流物』(BL出版)です。
ウィーズナーはこれで、コルデコット賞は3度目になりますね! 確か、次点のオナーブックに選ばれたものも2作品ありましたから、アメリカでの評価は非常に高いと断言してもいいでしょう。
もっとも、作品そのものの好き嫌いは、分かれてしまいますよね。
この『漂流物』は、まだ大人しい方でしょうか…

まず、表紙にインパクトがありますね。
巨大な魚の瞳が中央に大きく描かれています。
魚眼レンズそのもののようなその瞳に映っているのは、大きく歪んだカメラです。
このカメラが、今回の絵本のキーワードになります。

表紙を開くと、こんな言葉が目にとまります。


やがて、それは
どこかの浜辺に
うちあげられることだろう。

そして、それを見つけた者は
とても驚き、
だれかに伝えずにはいられない。



どんな驚きが待っているのでしょうか…



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◇ケイスリー/ケースリ,ジュディス◇

おじいちゃんがきたひから

著者名:ジュディス・ケイスリー(著)
あきよしこ(訳)
出版社:文化出版局
出版年:1987.05
ISBN :9784579402632





『おじいちゃんが きた ひ から』(ジュディス・ケイスリー/文化出版局)は、おばあちゃんを亡くしたばかりのおじいちゃんと、その孫の男の子との交流を描いた作品です。

この絵本、取り立てて優れている、と言うものではないかも知れません。
この絵本を選んだのも、最後の場面で、おじいちゃんと男の子が、一緒におばあちゃんのお墓参りをするからなのですが・・・

ただ、1つだけ。
この絵本には、亡くしたおばあちゃんを思っておじいちゃんが泣きだす場面があります。
この瞬間を・・・子どもにとっては衝撃的な瞬間を、描いた絵本というのは、実は意外なほど少ないと思います。


【死】を扱う絵本は多くあります。
【死】に向かう者を描いたものもあれば、残された者の救いを描いたものもあります。
でも、その多くは子どもが嘆き悲しむものです。
大人が悲しみに沈み、急に泣きだしたりすることは殆どないのです。
なぜなのでしょう?



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2008年08月09日

◇クレーグ/クレイグ,ヘレン◇

クマクマ、クマがいっぱい

著者名:マラ・バーグマン(著)
ヘレン・クレイグ(画)
山口文生(訳)
出版社:評論社
出版年:1998.05
ISBN :9784566003910





あたしは クマが とても すき。
いつか ゆめが、 ほんとに ならないかな、と おもってる。
あたしが ねがって ねがっていることは、
クマ クマ クマ、そこらじゅうが クマで いっぱい。



階段に腰掛けて、女の子はたくさんのクマを思い描いています。

すると、ドアを叩く音がして、大きなクマが入ってきます。

いいえ、それだけではありません。
もっともっと、たくさんの、いろんな大きさのクマが入ってくるんです。


きみの ねがいは ほんとになった!
ぼくたち みんな、きみと いっしょに あそびにきたよ!



あちこち、クマだらけ! ママの部屋にも入るし、洋服を引っ張り出すし、女の子の本やおもちゃもひっくり返して…

もう、たくさん!



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2008年08月04日

◇センダック,モーリス◇

まどのそとのそのまたむこう

著者名:モーリス・センダック(著)
わきあきこ(訳)
出版社:福音館書店
出版年:2006.03
ISBN :9784834009118





影と光のせめぎ合い・・・
目の端に、頭を垂れたひまわりが見えた瞬間、『まどのそとの そのまたむこう』(モーリス・センダック/福音館書店)を思い出していました。

「絵のなかには詩と同じぐらいすばらしいと思う絵」があるとは先に引用したファージョンの言葉ですが、本書の絵本のページ1つ1つには、詩よりも興味深い、様々な【謎】が描き込まれています。
実際に研究すれば、本書で1つの論文が書けるくらいでしょうね。
少し長くなりますが、これから、その【謎】の一端でも感じもらえたら・・・と、チョコちょこ流の解釈を書いてみます。ただ、チョコちょこは心理学や宗教、オペラに民話などの専門家ではありませんし、実際にあった事件との関わりやセンダック論に踏み込む気もありません。
単純に、絵本だけを見ての解釈だと思ってくだされば嬉しいです。


本書は、主人公の女の子アイダの父性の目覚めを描いたものです。
本書には、特徴的な2色が使われています。
赤・・・光、昼、現実、母性、女、あかちゃん
青・・・闇、夜、異世界、父性、ゴブリン、アイダ
では、本の中へと入っていきましょうか。

赤い旗をなびかせ、パパは船に乗って海へ出ます。見送るママとあかちゃんは赤い服、アイダは青い服を着ています。同じく見送るゴブリンが座る船の旗は青い色。
パパの船が見えなくなり、ママはあずまやでぼんやりとたたずんでいます。その横では、赤い旗の船(現実の船)が遠くに漂っています。
アイダはお家に入り、あかちゃんのおもりをします。魔法のホルン(『魔笛』です)を吹くと、窓辺のひまわりが育っていきます。この時のホルンは生命を育む母性でした。ただ、そこはやはり魔法のホルン。後には、死をもたらす父性に変わるのです。
アイダがあかちゃんを見ていなかった間に、ゴブリンが忍び込み、あかちゃんは氷の人形に取り替えられてしまいました。西ヨーロッパに沢山伝わる「チェンジリング(取り替え子)」のモチーフです。さらわれるあかちゃんの向こう、窓の外ではいつしか光が消えてしまっています。その横の壁には、この瞬間まで、パパの肖像画が画面に見えていました。
でも、次のページ。パパの肖像画は消え、窓にはパパの乗った船が見えています。ところが、その旗は隠れて見えていません。
アイダは状況に気付かず、氷の人形を抱きしめます。
すると氷が溶けだし、アイダはあかちゃんが取り替えられたことに気付き、怒ります。その瞬間、窓の向こうでは、パパの乗った船が嵐にあって沈んでしまいました。今までの父性が現実から消え、別の父性が目覚めたのです。



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2008年06月07日

◆ストー,キャサリン◆

マリアンヌの夢

著者名:キャサリン・ストー(著)
猪熊葉子(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2001.11
ISBN :9784001140958





出掛ける頃には、もう随分と陽も高くなってくれています。
木々の枝を縫って飛び交う、小鳥の姿も目に入るようになりました。
赤信号で車を停めると、微かに小鳥の囀りも耳の傍を通り過ぎます…

…同じ時刻に、同じ行動をしていると、季節の変化は如実に目の前に現れてくれますね。


3年間、通りすがりに見続けてきた子ども達を見かけなくなって、久しくなります。
恐らくは、受験勉強の為でしょう。
卒業した子もいるでしょうか。
殆ど毎日のように見かけていた子ども達に会えなくなるのは、奇妙にメランコリックな寂しさを感じさせます。


…あの子ども達は、きっとこれからも、チョコちょこが忘れない限りは同じ子供の儘で存在し続けることでしょう。
例え、年を経て亡くなったとしても、チョコちょこの狭い世界の中では年を重ねることなく生き続けるのです。
或いは、現実の世界ではこれからも当然存在していくでしょうが、チョコちょこが見かけなくなったその瞬間から、その子は存在しなくなるのかも知れません。
その子がチョコちょこにとって存在するかどうかは、非常に主観的なものであり、客観的な存在の事実は、チョコちょこ個人の世界の中ではそれほどの重要性を持たないのです。
人間は、限られたキャパシティーの中の存在でしか、世界を構築出来ません。
その存在が、何処で、どのような形で存在しているかを決めるのは、決める本人の主観によるのです。



…ナイフで削られた、短い鉛筆があります。


その鉛筆で、画帳に絵を描いていきます。

一軒の家と、その周り一面に草を。
庭を囲って、中には花も描きます。
庭の外には、大きな岩も幾つか置いておきましょう。

そして、2階の窓には、少年の頭と肩を描いたのです。


…夢を見ました。


夢の中で、一軒の家の前に佇みます。
見上げれば、少年が顔を窓から出しています。

少年は、夢の中で存在し、話をし、自分をマークだと言いました。



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2008年06月05日

◆ギンズブルグ,ナターリア◆

モンテ・フェルモの丘の家

著者名:ナタリア・ギンズブルグ(著)
須賀敦子(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1998.10
ISBN :9784480034274





雨…雨…

そうですね。

本当は、この本は雨が似合うのかも知れません…


仕事に急き立てられる日々が続いたので、何となくこの『モンテ・フェルモの丘の家』(ナタリア・ギンズブルグ/ちくま文庫)を手にしていました。

理由は簡単です。

この本では、登場人物が互いに手紙をやり取りします。
それどころか、その手紙の内容しかない本なのです。
…なので、読み始めてもすぐにやめる事が出来ます。短い章が幾つも並んでいるようなものです。
忙しい気分の時には、重宝する文体です。

それともう一つ。
本書では短い言葉が勢いよく、パッパッと飛び出してきます。
スッと言葉の流れに乗ることができ、サッとその流れから飛び降りることが出来るのです。

…でも、こんな読み方がいいとはオススメ出来ません(苦笑)


描かれているのは、イタリアの家族や友人や愛人たちの心の動きから妥協、倦怠、そして死まで。

続くと思っていたもの、続くはずがないもの、それでも続いて欲しいと願うもの…


死ぬほどわたしに会いたいと、あなたは言うけれど、同時に会いたくない気もするって言う。
わかります。
わたしにとっても、おなじです。

・・・・・・・・・・

ここ何年かのあいだに、たしかに、あなたにも、わたしにも、あまりにもいろいろありすぎました。
だから、もし、また会うようなことがあったら、しばらくはなにも話せないでしょう。

わたしも条件法を使いました。
どうしてかわからないけど。
われわれが、生きてるうちか死んでからかは知らないけれど、再会してわるい理由はなにもありません。




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2008年06月03日

◇グレアム,マーガレット・ブロイ◇

あらしのひ

著者名:シャーロット・ゾロトウ(著)
マーガレット・ブロイ・グレアム(画)
松井るり子(訳)
出版社:ほるぷ出版
出版年:1995.10
ISBN :9784593503353





晴れている空から、雨が降り始めるまでの描写が美しい絵本に、『あらしのひ』(シャーロット・ゾロトウ さく/マーガレット・ブロイ・グレアム え/ほるぷ出版)があります。
大好きなゾロトウの絵本。
勿論、雨が止んだ後の描写も素敵なものです☆


暑いあつい、いなかの夏の日でした。


あまりに暑くって…ゆらゆらと陽炎が立ちのぼり、小鳥も歌えないくらいです。


おや、もやがうごいて、ほてった空がはい色にかわりはじめました。はい色はどんどんひろがりながら、ほかの色をけしていきます。鳥はなかず、小枝もそよがず、風もふかない、どんよりした大きな世界が息をとめました。
大きくなるやみのなかには、何かがあります。ざわめくものと、男の子がまっている静かなものがあります。



…本当に、ゾロトウは素晴らしい方ですね!
こんな素敵な文章を読ませてくれるのですから…


やがて、稲妻が走り、雷鳴が轟きます。
そして、突然、雨の滝が斜めに落ちてきます。



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2008年05月26日

◇ゴフスタイン,M.B./マリリン・ブルック◇

作家

著者名:M.B.ゴフスタイン(著)
谷川俊太郎(訳)
出版社:ジー・シー・プレス
出版年:1986.03
ISBN :9784915619076





今、手にしているのはゴフスタインの絵本です。

巻かれている薄紙の下には、綺麗に澄んだ水色が見えています。
タイトルは『作家』。
ジー・シー・プレスから出ているもので、訳は谷川俊太郎さんです。

ゴフスタインの絵本は、大切なことに触れながら、でも、気負わずに見ていくことが出来ますね。
落ち着いた言葉、穏やかな線、柔らかい色…
何度も何度も、ぱらぱらと、ページを捲ってしまいます。

この絵本、チョコちょこの大好きなシャーロット・ゾロトウに捧げられているんですね♪
彼女も、ゴフスタインと同じ思いで、人の心に種を播いているのでしょうか…


どのように作家が作品を書くのか、この絵本でゴフスタインは教えてくれます。

ソファに座って考えを温め、紙に言葉を置き、それを切り、刈り込み、設計し、形を整える…


彼女は庭師、
だが土地も、
そこにどんな種子が
根を下ろすかも
さだかではない。



作品が人の心に届いた時には、


一日の初めての光に
彼女は見る
小さな双葉が
芽ぶいたのを。




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2008年05月20日

◇いせひでこ◇

ルリユールおじさん

著者名:いせひでこ(著)
出版社:理論社
出版年:2006.09
ISBN :9784652040508





朝日が、葉の落ちた枝を大地に描いているのを見て、不意にこの絵本の表紙を思い出しました。

あぁ、あれは朝の光と、朧な影…

あのアカシアの木は、影ではないはずなのだけれど、やっぱり、影を描いているのだと、妙な納得をしてしまいました。



『ルリユールおじさん』(いせ ひでこ/理論社)に出てくるソフィーは、図鑑が好きな女の子。

ソフィーは、その図鑑が好きで好きで仕方ありません。

それは、木の図鑑。
木のことなら、何でも教えてくれる。


でも、ある朝、その図鑑がばらばらになってしまいます。


本屋さんには、色々な新しい図鑑があります。


でもこの本をなおしたいの。


《その本》でなくては駄目なのです。

他の何か、ではなく…



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2008年05月18日

◆ゲーテ,ヨハン・ヴォルフガング・フォン◆

メルヒェン

著者名:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(著)
ヴェルナー・ディードリッヒ(画)
乾侑美子(訳)
出版社:あすなろ書房
出版年:1991.11
ISBN :9784751514399





これは わたしの『黙示録』だ

ゲーテ自身がこう言っている(「訳者あとがき」による)作品が本書、『メルヒェン』(ゲーテ/あすなろ書房)です。

ヴェルナー・ディードリッヒの美しい絵も、本書の興味深い内容も、決して子ども向けではないと思うのですが、あすなろ書房から出ていることもあって、図書館では児童図書のコーナーに並んでいることが多いのではないでしょうか。
でも、これは勿体ないですね。
本書は、ぜひぜひ、あらゆる年代の方に読んでいただきたいものです。

残念ながら、内容を簡単にでも紹介したいのですが、それが出来ないのも本書の特徴です。

また、ノヴァーリスへと繋がる作品としても知られていますが、本書に現れるキリスト教の影響が強いために、そのまま読むと少し違和感を覚えるかも知れません。


本書に出てくるのは、渡し守、鬼火、蛇、大男、金の王、銀の王、銅の王、四番目の王、ランプの老人、おかみさん、オオタカ等々…

そして、若者とリーリエの物語。


『メルヒェン』にはゲーテの深奥に潜む信仰や祈りが謳われ、聖書や民話、神話といった原初のイメージが踊っています。



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2008年05月17日

◇エルズビエタ◇

小さな恋

著者名:エルズビエタ(著)
柴田都志子(訳)
出版社:宝島社
出版年:1994.01
ISBN :9784796607186





その表紙に描かれているのは、白い岩の上で釣具を手にしている男の子。

彼は、人魚を釣ろうとしているのです。

夏休みになって、毎日、彼ファンクはあちこちの岩場で釣り糸を垂れていました。

そんなファンクには、いつも可愛い少女が一緒だったのです。


少女はファンクが大好きでした。でも、ファンクは人魚釣りに夢中です。
「ねぇ、ファンク、たこ上げしない?」
「今、手がはなせないんだ」


そんなある日、いつものようにじっと水面をみつめるファンクのうしろで、
ぽつりと少女がつぶやきました。
「ファンクったら、ちっともこっちを向いてくれないのね。いいわ」
それっきり、少女の姿が消えました。



傍にいなくなると、急に寂しくなってきたのです。
急に、心細くなったのです。

とうとう、ファンクは約束しました。


「わかった、もう二度と人魚釣りはしない。約束するよ」
とたんに庭の木戸があいて、少女が飛びだしてきました。
ふたりはにっこり笑うと、手をつないで、
海にむかって走っていきました。



でも、夏の終わり。
少女は海辺から去ってしまったのです。



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2008年05月10日

◆ウィリス,コニー◆

ドゥームズデイ・ブック

著者名:コニー・ウィリス(著)
大森望(訳)
出版社:早川書房
出版年:1995.11
ISBN :9784152079664





21世紀から14世紀へのタイムトラベル。

それぞれの時間の中で、平行して始まる物語。

中世へ向かった主人公キヴリンの帰還予定は、旧暦の12月28日。幼児大虐殺の日。罪なき聖嬰児ら…無辜嬰児殉教者の為の祝日…

14世紀のその日、キヴリンの腕の中では、幼い少女アグネスが発病していました。


アグネスはキヴリンを見上げた。その顔は真っ赤で、怒りに歪んでいた。
「キヴリンが来ないと悪い人につかまっちゃう」とアグネスはいった。
「いますぐ来てといって」




『ドゥームズデイ・ブック』(コニー・ウィリス/早川書房)はヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞した作品です。

でも、SFとして読むのは、少し違うかも知れません。

21世紀の描写は何処かコミカルな流れがある一方、14世紀の描写は、特に後半になるとその悲しみや苦しみ、怒りなどが胸に迫ります。

過保護なダンワーシイの言葉は、決して誇張ではないでしょう。


年端もいかぬ子どもたちが動物のようにばたばたと死に、その死体が穴に投げ込まれて山をなし、首に縄をかけられた死体が地面を引きずられてゆくその一部始終を見守って生き延びることなどどうしてできる?


キヴリンはもう磔にされてしまった。




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2008年05月07日

◆シュナック,フリードリヒ◆

蝶の生活

著者名:シュナック(著)
岡田朝雄(訳)
出版社:岩波書店
出版年:1993.07
ISBN :9784003246115





ちょうちょで思い出す本はたくさんありますが、やっぱり、お気に入りの『蝶の生活』(シュナック/岩波文庫)を一番最初に思い浮かべますね。
この本は蝶や蛾の魅力を、その美しさや生態までとても詩的な文章で描き出している素晴らしい作品です。詩人であるシュナック自身が描くちょうちょの絵も、とっても綺麗!
でも、残念ながら、彼は日本はもちろん本国ドイツでも、いえ世界的にも今ではあまり知られていません。詩集や絵本も多く出していたので、もっと紹介されてもいいと思うのですが・・・一度歴史から消された作家は、なかなか再評価されませんね。
シュナックの不幸は、第二次世界大戦の最中に詩人であり続けたこと。ナチス賛美の詩人と言うレッテルは、彼の中のごく一部でしかなかったのですが、あまりにも重すぎるレッテルでした・・・
『蝶の生活』を読む限り、彼の思想にそのレッテルの影はまるで見られません。別の原書を見たこともありますが、とても美しい絵が描かれている絵本でした。

歴史は時に残酷です。優れた才能も、多くは残された伝聞でしか評価されず、実際を知らない意見によって消されてしまいます。



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2008年05月06日

◇アーディゾーニ,エドワード◇

ダイアナと大きなサイ

著者名:エドワード・アーディゾーニ(著)
あべきみこ(訳)
出版社:こぐま社
出版年:2001.10
ISBN :9784772101608





庭の中、小さな女の子に導かれているサイが表紙になった『ダイアナと大きなサイ』(エドワード・アーディゾーニ/こぐま社)です。


ある冬の夕方、ダイアナの家に、風邪をひいたサイがやってきます。
サイのことを何でも知っているダイアナは、すぐにたくさんの薬を飲ませ、バターつきトーストをサイにあげました。

それから、何年も何年も・・・サイは庭の物置で暮らすことになるのです。
やがて、ダイアナは背の高い女学生になり、明るく賢い女性になり、ふくよかな中年の婦人になり・・・



いつまでも、変わらないもの。

いつまでも、続くもの。

それは、静かなものかも知れません。

それは、穏やかなものかも知れません。

それでも、いつでも「しあわせな、みちたりたきもち」にしてくれます。



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2008年05月04日

◇ヴォルフスグルーベル/ヴォルフスグルーバー,リンダ◇

どうするビアンカ

著者名:リンダ・ヴォルフスグルーベル(著)
いずみちほこ(画)
出版社:フレーベル館
出版年:1996.10
ISBN :9784577016831





お家の中で遊びたくても…でも、ビアンカには地下室しかありません。

お家は大きくて、3階まであるのに…

どうしてって?

…だって、ビアンカは小さなねずみで、お家は3びきのねこのものだったからです☆


絵本『どうする? ビアンカ』(リンダ・ヴォルフスグルーベル/フレーベル館)は、そんな可愛いビアンカがどうしても我慢出来なくなって、とうとう地下室を出てしまうお話です。


ビアンカは、わくわくしながら たんけんを はじめました。
めずらしくて おもしろそうな ものが いっぱい。



でも、遊び疲れたので…ベッドの上で、一休み。

そして、いつのまにかぐっすりと……


そこへ、


よるおそく、3びきの ねこが ねずみとりから かえってきました。
ついてない いちにちでした。
1ぴきも ねずみが とれなくて、
3びきとも おなかが ぺこぺこ。
ところが なんと、ドアを あけると ベッドの うえに、
ごちそうが のっているではありませんか。
ちいさいけれど やわらかくて おいしそう。
3びきは おもわず したなめずり。




ビアンカは、一体どうなってしまうのでしょうか…



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